2者の利益・リスク・契約形態
米国でPMが発達した信の理由は、工事費リスク管理の徹底と工事契約形態にあった。米国では1970年第半ば以降、国内の建設工事高がGDPの10%を下回り、建設業者の淘汰と、徹底したコスト見直しがおこなわれてという。
ここで建設費の構造を見れば「建設会社の工事費=Σ(各プロジェクトの工事費+各プロジェクトのリスク費)」となっており、「建設会社の利益=Σ(各プロジェクトのリスク費)」となっている。すなわち、建設においては予測しがたい要素が多々含まれており、そのリスク費がプロジェクトごとに含まれている。但し、全てのプロジェクトにリスクが発生するかというと、そうではなく一部に限られ、一部リスク発生プロジェクトとリスクを発生しないプロジェクトの一部が相殺され、残りリスク費は建設会社の利益に自動的に転ずるのである。 一方、同様の構造が、プロジェクト単体の工事費にも当てはまる。
- 「工事費=Σ(各専門工事の工事費+各専門工事のリスク費)」
- 「工事利益=Σ(各専門工事のリスク費)」
つまり、「リスク費」は通常一部の工事にのみ発生し、請け負った建設会社は、「Σ(各専門工事のリスク費)」が常にプラスとなり、利益が自動生成される。
ここで、米国においては、建築主が、専門工事のリスク費なしの金額で、直接各専門工事を発注し(「分離発注」という)、今まで利益に自動生成された「各専門工事のΣ(リスク費)」の減額を試みたのである。但し、建築主が、直接各専門工事を発注する専門知識と経験がないので、その業務を第3者に委託する。それがPM((Project Manager)=プロジェクト全体を俯瞰する設計者に近い立場)とCM((Construction Manager)=工事元請管理者に近い立場)の業務が発生する。それがPM/CMの始まり。
したがって、PM/CMを委託し、「分離発注」の工事発注方式にすると、総合請負発注形式に比べ、下の③式のようなコスト削減となる。
- PM/CM「分離発注」方式よるコスト減={Σ(各専門工事のリスク費)}-{一部専門工事のリスク発生費+CM委託費}
- 但し、CM委託費は、総合請負発注形式の諸経費(=一般管理費(利益含む)+現場経費)で相殺される。
これがPM/CMの始まり。そして、本来の意味である。