ところで、「建築(地域)設計」とは、「建物を建てることを、細かく計画する」ということですが、一見明瞭に聞こえる言葉にも意味としては不明確な事があります。つまり
『建物を建てるという行為は「何のために」細かく計画するのか、その建物は私たちに「何を」もたらし、その建物を「いかにして」細かく計画し建てるのか』
「建築(地域)設計とは何か」とは、この3つの疑問への回答といえないでしょうか。
何のために
(要求・目的)
「何のために」細かく計画するのか。
建築主・利用者が複数であれば、その要求・目的も異なります。また、全てを満足できるものは存在しませんから、たとえ建築主・利用者が一人だとしても、可能性を少しずつ、削ぎ落とす事も必要です。「何のために」建物を建ようとしているのか。これが計画の出発点であり、計画・設計にいきづまった時に、立ち戻るべき所となります。要求・目的が明確なほど、満足のいく、美しい建物ができるものです。
「何のために」/要求・目的を、明確にすることは、難しい事です。
明確な要求・目的を、皆様との共同作業により、見つけ出すことこそが、私たちの建築の始まりといえるでしょう。
何を
(目標)
建物は、私たちに、「何を」もたらすのでしょうか。
要求・目的=目標ではありません。道具・機械も要求・目的があり設計されています。建築(地域)設計に、特別な意味があるとすれば、建築(地域)自体に、その答えが含まれているように思えます。ただ、「住むための機械」、「記号化された記憶」という手法は、建物としては物足りなさを感じます。少なくとも、道具・乗り物・機械・映像・コンピューターから、絵画・彫刻・音楽からも得られない質の歓び、
先験的に建築(地域)であればこそ与えられる歓びが、建築(地域)の将来に破り存続する理由です。「この歓びが、建築(地域)の「何を」もって実現さているのか」の解答が、建築(地域)設計の目標といえるでしょう。
いかに (方法)
建物を「いかに」して建てるか。
いかに建物は構造・設備・音響・施工可能性を総合的に考え、計画され、各種材料により総合的に組み立てられて、造られています。社会性(経済牲・文化的理念)、芸術性などを含めれば、さらに広い総合性が求められているかが理解できます。
「いかに」は、施工段階では、プリフアプリケーションの課題建物が出来上がると、耐用年数、補修・改修の課題もあります。そして、「いかなる」姿で建ち続けることが、目的・目標を、満足させるかも重要です。さらに、地球資源の事も考えねばなりません。
いずれにせよ、「いかに」建てるか(方法)を、総合的に考えることが、建築のもう一つの原点といえるでしょう。
建築(地域)設計において「何のために」「何を」「いかに」の解答は、難しく、ひとつの解答はないし、時代とともに変わるものかもしれません。しかし、「住宅から地域」までの広範囲にわたる共通の課題であり、永遠の課題なのではないでしょうか。
理念
「何のために」「何を」「いかに」を問うことこそが、「建築(地域)設計が、まずすべきことであり、これからの活動の理念ともいえます。この問いを通して、私たちが求める建築・地域の理想像を描くことができるように思えます。
今までの考察で、私たちの建築(地域)設計の出発点を確認したつもりです。ここでの「問い」は、私たちが微力を傾け、今後、絶続発展させるべき原理であり、この原理をもって、私たち設計者の使命が、遺憾なく果たせることと思っております。建築(地域)設計という事業に、あえて挑戦するこの志をご理解いただき、皆様とのうるわしき共同作業により、理想なる建築(地域)が必ずや造りだされることを期待しております。
平成10年7月