建築家の家は住みにくい?
よく「建築家に頼むと、住みにくい家を作ってしまう。」という話を聞きます。「雨漏りがする」「暑い」「寒い」「使いにくい」「メンテナンスができない」という苦情です。
これには2つの理由があります。
- 建築家の知識・業務怠慢
- 建築家と建築主のコミュニケーション延滞による目的・目標の不一致
「雨漏りがする」「メンテナンスができない」などは①の例としてあげれれよう。しかし「暑い」「寒い」「使いにくい」の感覚的批判は②の理由についても考慮されなければなりません
有名な話に「ファンズワース邸」の訴訟事件があります。高名な腎臓医ファンズワース女史が、建築家ミース・ファン・デル・ローエに別荘を設計依頼。設計途中は二人の恋愛感情もあり順調だったが、ミースはこの小住宅のために設計から竣工まで4年の年月をかけ「暮らすための諸要素を満たす以前に美学的意図を追求した」。しかし、女史の恋愛感情が冷えたこともあり、暑く寒く通風の悪い(確かにそうらしい)、そして長い工期で高額となった建物は、その費用負担についてファンズワース女史から訴訟されたのである。(結末は一応ミース側の勝訴)。その後、この住宅は、不動産開発業者のピーターバルンボ氏が購入する。彼はミースの芸術作品を愛し、必要な手入れを無制限におこなえるほど裕福で、どの年も短い期間しか使わないという。
これはファンズワース女史の目的にはかなわなかった(いや恋愛感情のもつれが目的を変えた、もしくは恋愛感情が建設を完了させることさえ拒んだ)のであるが、バルンボ氏にとっては最高の目的をかなえた建築であった例ではないだろうか。