メリット3.設計見積ができる
最大の特徴は、民間でも設計見積ができることです。
従来は
設計図面作成
→施工者が(設計図をもとに)見積
→設計事務所査定
→工事金額決定
と、なります。これでは
- 設計者が数量の根拠がわからないので、正確な査定は不可能
です。事前に切りしろをつくっておいて、削るがいいところです。または、施工数社に見積を出して、比較するのが一般的ですが、これとて、施工者の工事種目によっては、得意不得意・考え方の違いもあるので、数量を多く見るケース、単価を高めに見るケースとさまざまで、各種専門工事間の査定も実際は難しいのが現状でしょう。明らかな計算間違いを査定できれば立派です。せいぜい切りしろをつくっておいて、上代価格(定価・はじめの見積価格)の数パーセントを切って査定価格とし、その価格で契約するのが、今でも一般的でしょう。
公共工事では、膨大な設計数量調書・設計見積書を作りますが、莫大な費用がかかり、民間では現実的ではありません。
3D・BIMの設計では、
3Dモデル作成
→設計図、設計見積書(同時にできる)
→施工者が(設計見積書に基づき)見積
→設計事務所査定
→工事金額決定
3D・BIMの設計では、設計で作成した3Dモデルを利用して、設計見積書を作成することができます。施工者は、設計見積書の金額を伏せた、項目と数量表をもとに見積書を作成します。数量の確認は施工者が、行います。3D設計では、入力ミスがない限り、大きな間違いはありません。違いがあるとすれば工事過程で欠損分をどの程度見るか程度です。したがって、設計事務所は、公正に金額評価を査定し、発注者に報告できます。
・・従来民間では行なわなかった設計見積もりが可能に
このように、3D・BIMの設計では、従来民間では行われてなかった、設計見積もりが、はじめて可能になったのです。これはなにを意味するかといえば、工事価格を公正に評価するベースができたということです。見積書の基本構造は単純な話で、「単価×数量」。今までは、単価もわからず、数量も確たる論拠もなく、施工者がかかるといわれれば「そうだ」としてやってきたのが現状です。対抗手段としては、相見積により施工会社どうしを競わせることが、唯一の手法だったのです。
公共工事での設計見積書の作成は、何のためかというと、厳格なコスト管理というより、公共であるが故の、公開公正の原理のために行っていたともいえると思います。ゆえに、公共工事では、談合という手法は、なかなかなくならないのが現状ではないのでしょうか。
・・民間設計見積・・だから、手抜き防止・品質が保障。
上のように、見積書は「単価×数量」ですから、数量の操作で簡単に金額が変わります。見積契約時には、数量を多少増やしておけばそのまま利益となるわけです。「数量を減らす=手抜き工事」も考えれれます。数量と単価の十分な査定のないまま、発注者に減額の圧力を強いられ、結局、「手抜き工事」となり、結果的には、発注者・施工者の双方の不利益となるでしょう。設計見積による公正な査定・交渉こそ、コスト管理と建築の質を考える近道だと思います。