1. 単体
光を認識させる面・質量のある実体、それを支える構造体。それと私が対峙し、対象の存在を感じ、自らの存在を感じたとき、そこに空間が生じる、と私は思う。
たとえば、草原に立つ一本の木、落葉樹を考える。
葉を全て落とした木は、構造体そのもの。光は、幹・小枝を地面に移すのみ。リアリティーはあるのだが・・。やがて葉が茂り、光の反射は様々な表情を見せる。反射・透過・影を作り出し、生命の喜びがあふれる。そこに対峙した私には、あらためて今ここにいることの喜びが沸いてくるように思える。
一人のダンサーがいる。もちろん、均整・緊張・バランスの取れたダンサーの肉体は、それだけで構造的効果による存在を感じさせる。そこに、光が当ると、緩やかな筋肉の起伏、衣装による反射効果が、そこにダンサーがいることへの強い意識を生み、そこに対峙し、ダンサーの存在を意識していることを自覚する時、始めて空間が生じたといえると感じる。
対峙する存在の意識が、第1の空間だ。
2. 囲み
ダンサーはやがて、二人となり、囲みを作る。そこに第2の空間を造る。
囲い・包む空間だ。人を囲い・包むことは、建築の最大の特徴といっても良い。
囲いは、囲われる対象である、私を意識させるのに十分な要素である。
一人を包む囲い、二人を包む囲い、複数を包む囲い。そして、個人的(プライベート)囲いから公的(パブリック)囲い。静的かな囲いから高揚させる囲い。囲むものの大きさ・性質・状況により、囲いのしつらえを変形させる。ダンサーが、二人から、三人・四人・・・・となり、その輪が広がり、ダンスの表現力が広がるように。
第2の空間は住宅/建築の基本単位である。
3. 流動・シークエンス
ダンスの輪は、やがて、輪の他に、流れを生み出し、群を作り出す。
囲われる対象の人もとどまりはしない。囲いの中をめぐり、囲いを飛びだし、ダンスの流れの中をめぐり、通過し、また、別の囲いに至る。
様々なしつらえの囲い(第2の空間)を移動すると、第2の空間の残像が、意識の中に重層して形成され、また、1つのイメージが構成される。またしても、このイメージが、自己の存在を喚起させるとき、第3の空間が生まれたと考える。
つまり、第2の空間の囲いは、人がとどまる事により自己の存在を認識される効果とすれば、第3の空間は、人が流動し、シークエンスを感じることにより自己の存在を認識される効果といえる。
2. 素形
光と構造体により生み出される空間の三つの形態
「単体/囲み/流動・シークエンス」
は、住宅/建築の最初の形・素形と名付けたい。