コストダウンの原理
通常、工事施工会社外部に出される見積書の諸経費は、異常に低い。それゆえ、工事現場での実行価格は、口外された見積書の純工事費内から一定金額を諸経費として繰り上げ、工事に着手するであろう。
これは、商慣習で、発注者(建築主・オーナー)が、諸経費を認めないからだと、よく言われる。しかし、より深く考えてみれば、従来の工事請負の場合は、工事の中に多くのリスクが内在し、リスクが発生した場合は、全て工事施工会社に負わされるという構造がある。然るに、説明はできないリスク費を純工事費の中にばら撒き、工事総額のなかで、工事施工会社が、金額を操作できるように、諸経費までも、純工事費に分散したともいえる。設計施工一貫請負という日本の事情も、この様な契約形態にさせているのは自明である。
リスク費は、不定であるが、実は、このリスク費が、発生しない場合は、工事施工会社の利益に転ずる。しかし、このリスク費は工事施工会社にとって、逆に経営の安定化とは、逆のモーメンととして働く。一方、発注者(建築主・オーナー)も、常に、過剰のリスク費を負担しなければならないのである。
ここで、リスク費の要因を考えると、
- 発注者工事発注後要求のリスク
- 設計不整合リスク
- 見積不整合リスク
- 自然発生の不可抗力
であるが、2.3は、従来の2次元設計図内部のリスクであり、1も従来の2次元設計が一般の人には理解できない要因が多い。したがって、3D・BIM設計で、2次元設計という設計の手法に内在していた、リスク要因を回避できるならば、工事リスクの多くは回避できる。
このように、工事リスクを極力回避し、かつ、諸経費を正当に、発注者(建築主・オーナー)が認めるならば、リスク費を、工事請負契約の外に出せるのである。
これにより、コストダウンが達成され、
- 工事施工会社と発注者(建築主・オーナー)のWIN-WINの関係
が築けるのである。
実は、この工事リスクを契約の外にはずし、コントロールをする考え方が、アメリカで発達したPM(プロジェクトマネジメント)なのです。欧米の建築設計は、契約の概念から日本よりはるかに密度が高く、3D・BIM設計導入以前からこのような考え方が可能であったといえます。