1.CMの発生と米国のCM
これは、平成5年NTTのCM調査を基調に報告である。建設契約形態は大きく5つに分類される。
- ①伝統的:施主と設計者・ゼネコンが契約する。サブコンはゼネコンと契約する。英国で主流。
- ②純粋CM:施主と設計者・サブコン・CMが契約する。
- ③-1.CMatRISK(米国):施主と設計者・CMが契約する。サブコンはCMと契約する。また、GMP(Guaranteed Maximum Price最高金額保証:工事の最高額を保証)が前提。ただし、純粋PMでもGMP契約がなされる場合もあり。
- ③-2.MC(英国):施主と設計者・CMが契約する。GMPはなし。コスト削減分は、建築主に行く。
- ④デザイン・アンド・ビルド:施主とゼネコンが契約する。ただし、ゼネコンと設計者はJVをあらかじめ組んである。サブコンはゼネコンと契約する。
- ⑤分離契約:施主と設計者・サブコンが契約する。ドイツで主流。
以上が概要であるが、CMは主に米国で発展する。CMの発生は、1960年代①建物規模増大②設計期間長期化及び変更設計の過多③インフレによる予算オーバー④ゼネコンの総額請負リスク破綻によりCWT建設を契機に発生。その後CMrの質の低下、CMへの権限の不満などから、CMatRISKやデザイン・アンド・ビルドの契約形態が派生した。これらの契約形態は①伝統的→④デザイン・アンド・ビルド→③-1.CMatRISK→②純粋CMの順でプロジェプロジェクトの複雑性・規模がより大きく、施主の能力がより高い場合に適するといえる。現在米国でのCM市場は1992年で94億ドル、1982年に比べると7倍の成長を見せている。このCMの発達には、米国の建設事情を把握しておかねばならない。①施工図に近い設計図書の制度(さらにCSIにより工事分類が明確)②サブコンの見積・支払いがオープン③ボンド制度により工事履行と支払が保証されている④サブコンの高い技術力とユニオン(建設業協同組合)の存在の4つである。
2.日本の建設業界とCMの現状及び可能性
日本では、施主がソフトにお金をかけない傾向にある。東京都庁舎(丹下健三設計)と東京国際フォーラム(ラファエル・ビニオリ設計)の設計料を比較すると20億円と83億円で前者は後者の1/4にも満たない。一方1992年小規模オフィスビルの㎡単価は日本が30万円、米国が15万円と前者は後者の2倍で、建築価格は高いが設計監理料は安く、設計監理・CMサービスをゼネコンが無償で提供している状況がうかがえる。しかしながら、社会状況の変化と共に、発注者のニーズも変化している。新しいニーズとして
- より安価
- コストの透明性
- 品質とコストの両立
が上げられる。これはJIAの建築家に対する顧客満足度調査でも不満要素として
- 維持保全計画
- コストコントロール力
- 見積内容検討・調整
- 工事費概算の作成
が上げられ、これらからCM業務の可能性が伺える。行政でも2004年4月には国土交通省がPM/CMの本格導入を図る予定である。
3.NTTファシリチィーズCMの概要と戦略
日本のソフト軽視の現状では、実務の一般論として「CM業務の施主への理解」「業務のプレゼンテーション」特に「CMもしくは建設行為のプロセス」をわかり易く説明することが重要であることを確認しておきたい。次に、NTTファシリティーズCM業務のコンセプトは、逓信省・電電公社の時代から培ってきた量と質の技術力を生かし、他と異なる次のような点を上げる。
- 提案見積方式のVE(コスト減ではなく)
- 標準仕様・標準設計
- CMrによる契約の合理化と専門工事業者の育成である。
またCM形態も
- 純粋CM
- CMデザイン(CMと設計をパッケージにしたもの。CMの組織内発言力が課題)
- GMP付CMデザイン
- CMatRISK(工事費預り型:最もリスキーなので工事会社はCMを指定、工事費が安価の場合も今のところ追加Feeはなし)
のCM契約形態をとっている。
NTTファシリチィーズCMの事例紹介として①CMatRISK(工事費預り型)の三洋電気テクノロジーセンター:コストとスケジュール管理に成功、CMと設計の関係が浮き彫りになった例②某放送局社屋:デジタル化の新技術導入を前提にしにCMが参加し成功した例をあげる。
4.最後に
コスト低減とは
- 『設計費+監理費+工事費≧(CMfee+設計費+監理費+工事費)-(人件費等施主側業務量減+スケジュール短縮分のコスト)』
であること。コスト低減のフェーズは
- 『施主・投資委員会決定額から工事契約額のフェーズで』
考えるべきことを確認したい。