プロジェクトマネジメントPM講座
BSI講義要約 

プロジェクトマネジメント(PM)とは何か

講義日:2003/10/22 講師名:ジョン・ディキソン

1.一般論としてPMとは何か

発案から製品完成までのプロセスのシステム構築・管理といえる。

 

2.建設におけるPMの視点

建設では、発注者が発案・企画段階を、設計事務所が基本構想・基本設計・実施設計を、発注者が、工事入札を、ゼネコンが施工というプロセスをたどる。ところで、一般的に発注者から見ると、建設の機会は数年に一度の大仕事であり、建設のプロセス全体を把握するのは難しい。従来は、設計事務所・ゼネコンにプロセス管理を任せることが多い。しかしこの三者は、プロセスの中でそれぞれの重要な役割を果たしつつも、

  • 発注者=最小限の出資
  • 設計事務所=最高のものを希求する志向
  • ゼネコン=工事による利益追求

という相反する目的を担うこととなる。

PMは、この三者とは別の「第四の立場」で

  • 「最適の製品=建築を生み出す」

ことを目的とし、発注者へのアドバイス・プロセス管理がPMの役割といえる。

このとき、実務的経験からは

  1. 「Common Sense」
  2. 「発注者のコントロール」

が、最も重要と考える。 

 

3.組織におけるPMの位置付け

PMの組織的位置付けは、大きく次の3つと考える。

アドバイザーとしてのPM
古典的コンサルタント・アドバイザーとして機能 アドバイザーとしてのPM→古典的コンサルタント・アドバイザーとして機能
パートナーとしてのPM
発注者組織の一部として機能パートナーとしてのPM→発注者組織の一部として機能
コンストラクション・アドバイザーとしてのPM
日本のゼネコン的役割であるが、各請負業者の契約金を施主に提示する点で異なる コンストラクション・アドバイザーとしてのPM→日本のゼネコン的役割であるが、各請負業者の契約金を施主に提示する点で異なる

 

4.PM/CMの米国で発達した理由

社会的背景として、1970年代中期、景気の悪化。建設工事高がGDPの10%を下回り、建設業者の淘汰と差別化の必要が、PM/CMの米国での発達の契機となる。全国型vs極地型、ゼネコンvs専門業者、大規模工事vs小規模工事、請負型vs管理型などである。この最後の「管理型」業務形態がPM/CMである。また、公官庁でリストラが進み、施設部等の公共事業管理部門が縮小。これにより、建設プロセス管理のノウハウを施工主側のinhouseに持ちえなくなり、アウト・ソースが行われるようになったこともそのきっかけである。

図1.建設業者のリスクと利益
図1.建設業者のリスクと利益

コストダウンのために建設利益の見直し、つまり、リスク経費見直しがお粉なわれた。従来工事費の中には、予期せぬ事態に対して必ずリスク経費が見込まれている。不測の事態に赤字・もしくは相当のリスク経費が使われるが、多くはリスクが回避され、黒字物件でその赤字は回避され、リスク経費が自動的に利益に回収される。(図1参照)

図2.プロジェクトの工事費とリスクと利益
図2.プロジェクトの工事費とリスクと利益

 

個々のプロジェクトにおいても、必ず工事費にはリスク経費が見込まれ、リスクが回避されるとその経費は収益となる。PM/CMはこの秘密裏に利益へと変身するリスク経費を削減し、リスク経費の変わりにこの経費とは格安の、技術的に裏付けられたプロジェクト管理Feeを受け取るシステムと考えられる。(図2参照)

また、一般的に設計時に時間をかけること、建物の部分的竣工・使用が認められる米国では、ファーストトラック(設計期間)の時間短縮が、総建設費削減にもつながり、PM/CMがその短縮に有効である

5.PM/CMの存在意味
図3.企画・設計・建設プロセスとPM/CMによるコストコントロール概念図
図3.企画・設計・建設プロセスとPM/CMによるコストコントロール概念図
  1. VE
  2. コストマネージメント
  3. フレキシブルな業務形態によるサービス

が上げられる。

  1. はコスト削減ではなくVE=(解決策による利益/コスト)であること
  2. は入札時のみではなく企画・設計段階が大切であること(図3)
  3. はPM・CM・CC(Constraction Consultant)・単独査定・単独VEなどがあること

を指摘しておく。


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