1. 設備の取巻く現状
バブル期以降次のことを理解する必要がある。
- 「ハイグレード・ローコスト」-バブル期のハイグレードを買い手市場で安く購入できる、できた状況がある。
- 「キープグレード・ローコスト」-しかし現在ではコストにあったグレードが要求されるべきである。
- エンジリアリングとコストプランニングは不分離であること
- LCCから見ると建設費(イニシャルコスト)は氷山の一角に過ぎないこと。
2. 設備コストの仕組み
- 設備工事費の特徴
- ①受注生産でありこと
- ②グレードに大きくコストが左右されること
- ③請負形態・機材の流通過程による変動要素が多いこと」
- 特に3.では自動制御設備・消化設備・受変電設備・中央監視設備等メーカー責任施工請負も多いこと、機材はメーカーからの購入コストに大きく左右され且つ流通過程においてその巾が多きいいことを指摘しておく。
- 設備コストの構成
- 建設費における設備工事の割合は事務所ビルを基準とすると以下の割合となる。
- 他の施設ではこれに特殊要素が加わり比率下変化すると考えればよい。たとえばホテルでは一般的に客室照明はFFEであるが外資系の場合FCUまでFFEに含む場合もあり、このような前提条件によっても設備工事割合は変化する。設備中項目ごとの特徴をあげると
- ①電気設備の65%は機器・専門工事費でありメーカーからの購入価格に大きく影響されること
- ②衛生設備では法的に規定された防災関連工事は変更可能性の少なく、またこれが60%程度を占める機器・専門工事のうちほとんどを占めること
- ③空調設備は機器・専門工事が50%を占めこのグレード・システムが多義に渡りコスト把握が難しい。
3. 発注方式と設備コスト
設備工事費には現場雑費(設備工事諸経費)10%が含まれる。本来この現場経費にて分離発注が可能と極論すれば、設備直接工事費・一括請負の諸経費が26%・12%と仮定すると、一括発注時には(26%+2.6%)×12%≒3.4%計算上は高いことになる。
4. 設備コストのコントロール手法
- コストコントロールの流れ
- 「パレートの法則」によると進捗率20%の段階でコスト決定の度合いは80%とされる。つまり機能・形式を決定する基本設計段階でコストの80%が決定する。
- 変動要因とグレード
- グレード設定はコストに直接関連し最もコストに影響をする要素である。その他変動要因としては立地・建物用途・建築形態があげられる。地方の場合、受電引き込み・浄化槽の有無はコストに大きな影響を与える場合がある。オフィスの場合のグレードを例にとると次のような視点がある。
- 照明のルーバーの有無
- 照明のロ型システム・システム天井の差
- OA電源容量
- 小区画空調
- 便所空調
- 5.は近年臭気防止の点から採用される場合がある。
5. ライフサイクルコスト(Life Cycle Cost=LCC)からの設備計画
LCCはイニシャルコスト(企画設計費・建設費)ランニングコスト(修繕更新費・一般管理費・保全費・運用費)廃棄処分コストからなる。大規模事務所ビルを例にとると50年間LCCの割合は次のようになる。
- 初期建設費:26%
- 初期建設設備費:8%
- エネルギー費:32%
このように、ランニングコストのエネルギー費縮減効果は大きな影響を及ぼすことを指摘しておく。
6. 実務の知識
設備見積査定
- 設備の場合数量把握が難しい。㎡あたりの基本数量を元にする計画数量で査定するのが簡便で10%以下と確度も意外と高く効率的である。配管ダクト等は材料費・労務費が別となっているのが設備工事の特徴である。(建築は材工別が一般的)
民間・公共の見積書の違い
- 民間では、契約書に請負代金内訳書が添付され、工事費出来高・設計変更額査定の基準となる。
- 公共工事の場合、総価契約方式がとられ請負代金内訳書は添付されず、工事費出来高査定・設計変更額査定には設計者作成の工事費内訳明細書が基準となる。
設備コスト縮減の手法
- イニシャルコストでは無駄のない設備計画が重要。設備の視点からは配線・配管・ダクトの短縮が重要である。
- ランニングコストでは搬送コスト縮減が重要。つまり、イニシャル・初期建設の性能・搬送経路に左右される。
- 断熱・日射遮蔽等建築的省エネ対策の効果も大である。
- 建築行為1サイクル中設備更新は2~3サイクルで、更新に配慮したゆとりがコスト縮減につながる。
7. 設備設計のあるべき姿
設備設計は予算枠だけ決められプロジェクトが進められるケースがよく見受けられる。企画・設計段階にて、機能・コンセプトをよく練った上でコスト設計されるのが本来の姿である。