プロジェクトマネジメントPM講座
BSI講義要約 

建築・不動産プロジェクトの事業企画の立てかた

講義日:2004/1/7 2004/1/14 講師名:田村 誠邦

1 はじめに

プロジェクトの事業企画とは、土地の有効活用を組み立てることであり、さらにそれは『4要素=「需要(ニーズ)」「土地」「資金」「事業主体(事業主)」をいかにそろえるか』と言うことである.

  • 例1) コーポラティブハウスの場合「需要=住みたい」「土地」「資金=自己資金ローン」「事業主体=建設組合」という4要素で構成される.
  • 例2)バブル以前は『「土地」=担保』とすれば「資金」「事業主」「需要」も半自動的に生成されたとも言える.バブル以降は特定市街地農地の宅地並み課税、土地の含み損処理のための企業の土地売却により「土地」が余剰する一方、逆に「需要」と「資金」調達さえできれば事業は成立するといえる.都心型高層マンションは都心居住の「需要=ニーズ」とREITによる「資金」調達により『要素』をそろえ成功させた事例といえる.

以下概要・項目解説はテキストに譲り、強調すべき点をレポートとする.

 

2 依頼者ニーズの把握と基礎調査
  1. 依頼者ニーズ把握
    1. 依頼者に決定権あるとは限らない
      • 特に相続対策が挙げられる.相続対策は分割・納税(流動性財産化)対策が主であり節税対策は従といえる.節税対策の基本は次ぎのように考える.地評価額8000万円の土地に固定資産評価額7000万円の建物(貸家)を造り、借地権割合70%、借家権割合30%、の場合、貸家建付地評価額6320万円(=8000×(1-0.7×0.3))建物(貸家)評価額4900万円(=7000×(1-0.3))債務▲1億円とすると相続税対象額は1220万円となることが相続対策の概要である.この場合債務1億円が貸家で返済されることが大前提である.相続対策はこのようなプロセスで行われる為、分割・納税(流動性財産化)対策時の依頼者決定権者の見分けが重要である。
    2. 土地建物の権利関係・家族構成の把握も必要
      • 例としては、「Aの敷地にAの子会社Bの建物がある場合、AがB社の建物を建て直すとAがBに賞与を与えることとなりBは納税が発生、BがAの敷地に借地権を利用して建物を建て直す場合BはAへの承諾(条件変更承諾料は土地の10%程度)が必要であり、かつ、建物のみ担保で借地権は担保にならない.」ケースが上げられる。③依頼者のニーズを的確な把握が必要:相続対策で指摘したように節税対策を依頼されても、分割・納税対策のほうが重要であり、さらに不要の場合もある.依頼者自身ニーズを明確に捉えていない場合も多く、企画提案の目標を明確に設定することが重要である.
  2. 基礎調査のやり方
    1. 土地調査
      • 権利関係では登記簿に載っていない権利もある.登記簿上はB敷地がA敷地の横で1.5mで接道する旗状敷地の場合、古い確認申請にてA.B共に押印の上2m以上の接道申請がされている場合これも1つの権利となる.
    2. 既存建物調査
      • 土地所有者と建物所有者が異なる場合(借地権.使用貸借)は要注意.使用貸借とはAの敷地に息子Bの家屋が立つ場合、Bは借地料不要であるが、Aは借地権なしの更地評価額の100%課税を受ける例である.
  3. 作業計画の立案
    • 業務を受け取るか否かの判断も重要.「事業の成立性」「依頼者の体制・資質」「作業フィー支払可能性」など判断し、プロフェッショナルとして「事業の非成立の進言」も必要かつ重要.

 

3 立地計画と市場把握

すべての事業可能性、立地市場調査は不可能なので、現実的にはいくつかの事業計画の仮説を設け、データ収集・分析を行い、答えを出すのが一般的である.

  1. 土地の読み方
    1. 広域から地域・計画地へとブレークダウン
      • 最近は国・地方行政の上位計画の意味が薄れつつある
    2. 周辺状況 ー土地利用
      1. 空地の把握は重要.空地の理由を分析すると,下記の4点が、動向の把握に有効である.
      2. ⅰ)ポテンシャルが無い
      3. ⅱ)ポテンシャルが有るが機が熟してない
      4. ⅲ)近隣の反対がある
      5. ⅳ)近隣空地に同施設計画がある
    3. 周辺状況 ー開発動向の把握
      • バブル以前は土地そのものが不動産投資の対象であった.現在は「土地+建物」で立替・コンバージョン・リニューアル・スケルトンインフィルなどの新しいコンセプトを考える時代である.
    4. 地価と路線価
      • 地価は経済ポテンシャルを総合的に表す.また地価により事業の組み立てが変わる.たとえば等価交換の場合地主が土地10億円・デベロッパーが15億円の出資をしたとすると、その価値比率を按分し、土地は地主4億円デベ6億円、建物は地主6億円デベ9億円となる.当然土地が高ければデベの建物の取り分は少なく、土地が安いと地主の土地建物比は少ない.一方実勢価格からデベの収益を考えると、上の例でデベの原価15億円、デベの必要粗利率20%とすると総売上高=原価÷(1-必要粗利率)=15億円÷(1-0.2)=18.75億円、相場販売単価250万円/坪とするとデベの取得するべき専有面積=18.75億円÷250万円/坪=750坪となる.したがってデベの9億円の建物で750坪以上の面積確保が事業の成否を決める.したがって地価によりデベの建設可能面積が影響され、事業に大きな影響を及ぼす.
    5. 開発のポテンシャル
      • 土地建物一体で、収益還元法で評価される.「収益価格=純収益(NOI、償却前営業利益)/還元利回り(キャップレート)」で判断される.
  2. 市場の読み方
    1. 社会的背景の変化としては、下記の2点の影響は大.
      1. 「人口の減少」
      2. 「インターネット情報の利用」

 

4 ボリュ-ムスタディー
  • 手法としては徐々に速やかに精度を上げる.
  1. ボリュ-ムスタディーの目的
    • 事業の成立性をチェックするのが最大の目的.用途選定で土地利用の場合は白紙から、店舗の場合はフロア面積で業態が変わる.ボリュームスタディーは依頼者とのコミュニケーションの機会として重要.本音を引き出すツールとなる.調べてから来ますだけではいけない.
  1. ボリュームの決定要因
    • 法的規制の他に郊外店舗など大駐車場の確保など用途による適正規模、賃料単価と空室率・賃貸と分譲・市場の飽和度など需要による適正規模も考慮されなければならない.

 

5 用途選定と事業コンセプト
  • 建物を作るのが目的ではなく手段であり、事業コンセプト創造が目的.
  1. 用途(業種)の絞り方
    • 主観的プロセスを客観的プロセスで検証することが基本.客観的プロセス次の1.2.3をはチェックし最後に4でを確認検証。
    1. ①立地・市場性
    2. ②ボリューム
    3. ③事業採算性
    4. ⑤依頼主のニーズ・事業リスク回避の適合性を検証
    • 駅前ホテルなどでは自主建設運営、貸借、フランチャイズの手法の選択もできる.
  2. 施設成立規模の把握と業態の考え方
    • 物理的ボリュームではなく商圏・現在将来の競合施設の有無など(スポーツ施設では年代別人口・競合施設の影響は顕著)用途(業態)としての成立規模を「量」「質」から考える。商業・医療施設では特化した業態により付加価値が異なる。「業種」「業態」のミックスによる相乗効果を考えコンセプトを作り出すのが望ましい.
  3. 事業コンセプト
    1. ①事業コンセプトとは
      1. 「事業内容」:上述の「業種」「業態」の選択
      2. 「事業フレーム」:資金の調達方法・事業パートナー選択
      • 上の2つに分類される
    2. .②対応型・創造型
      • 本当に「何が必要で」「何をつくるか」という創造的部分が日本では弱いとされる.この点でコンセプトを分類すると
        1. 「環境対応型」
        2. 「環境創造型」
      • に分類できる.後者はTDA(東京ディズニーランド)、アークヒルズの例があげられる.ただし失敗例としては、トマム、ハウステンボスも挙げられる.
6 事業フレーム
  1. 事業主体
    • 借地権・相続対策では名義により税負担が変わってくる.相続対策では従来の賃貸用不動産建築による相続税評価額低減の手法は、返済が進むほど建物分資産が増え効果が低減する面がある。平成15年改正相続時精算課税制度を用いれば贈与税軽減を利用し建物をあらかじめ贈与し、土地は贈与税相当額の控除を受けながら相続する手法も考えられる.リスクの所在を検討し、それを補うよう事業主体を考えるべきである.
  2. 事業手法
  1. 自己建設方式
    • 資金調達・建設発注・テナント確保のすべてを自前で行う方式.
  2. 等価交換方式
    • 「3.1.3周辺状況 ー開発動向の把握」で示した方式。土地を手放してよい場合、債務なしで可能なため、収益性・流動性・安全性が高く資産としては有効.共同ビルにも相性がよい.「全部譲渡方式」は、一度土地全部をデベロッパーに譲渡し、土地持分共有権と建物区分所有権を得る方式。途中地主死亡・破綻の場合デベのリスクは大きいが、実務的にはこれがほとんどである.「部分譲渡方式」は土地所有者が土地の一部を譲渡し、譲渡代金を受け取った上で建設会社と土地所有者・デベがそれぞれ独自に建設発注契約を行う、もしくは土地所有者分の建物を引き受ける形式である.平成19年まで延長の「特定事業用資産の買換特例」を利用すれば一部敷地を売却し、場所を変えて土地を購入しそこに自らの建物建設も可能である.
  3. 土地信託方式
    • 土地所有者は土地所有権を信託銀行に移転し信託契約を結び、契約期間は神託銀行にすべてを任せ、配当を受け取る方式.契約満了後に土地・建物の財産を受け取る.リスクは土地所有者がすべて取るため、民間の場合皆無.公共事業ではまだ有る.(欧米では土地信託以外で、親など委託者が複数いて子など受託者が一人の場合、信託方式を利用している.)
  4. 事業受託方式
    • 土地所有者が金融機関の融資を得てデベに建設・一括賃貸契約を結び、80~90%の賃料をとる方式.1つの投資であるので、期間・出口戦略・指標比較の厳密な検討を要する.
7 概算に役立つ採算指標・目標建築コストの算定法

最後に参考として、概算に役立つ採算指標・目標建築コストの算定法を挙げる。

  1. 採算尺度
    • 採算尺度=年間賃料収入/建物投資額-(実行借入金金利+3%)
    • 採算尺度≧8~3%=キャッシュフローショートリスクは小
    • 採算尺度≦0%=キャッシュフローはショート
  2. 目標建築コスト
    • 目標建築コスト=年間賃料収入/{(借入金金利+3%+目標採算尺度(3~7%))×1.15}

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