講義日:2003/12/3 講師名:中津 元次
1.1 施設資産評価の必要性
資産は
- 流動資産
- 有形固定資産
- 無形固定資産
- 投資他資産
で、このうち固定資産が全体の55%、②の土地・建物構築物が25%を占める。また連結決算にて連結施設資産評価(%)(=施設資産/売上)を見ると、関連会社が提出会社の2倍もあることがあり、施設資産の大半が関連会社に所属しているケースもある. したがって経営効率の指標ROA(=利益/売上×売上/資産)は、資産を減ずることにより数値は上がるから資産の大きな比重を示す施設資産の減少は経営効率に重要である.施設資産の効率的利用はMNチャートが有効なことはまえにも述べた通りである.
1.2 ポートフォリオによる資産戦略
様々な施設資産の戦略に対しては資産利用度・内部価値の2つの尺度で評価することが有効である。その結果
- 「売却と保持」
- 「SLB=Sell LeasebackとEMS=Electronics Manufacturing Service(製造部門アウトソース)」
の戦略を図る.
1.3 減損会計
近年国債会計標準である減損会計が採用され、事業用固定資産は使用価値(=将来キャッシュフローの現在価値の合計)と正味売却価値(=処分費用を除いた現時点での売却価値)で評価されることとなった.これにより自己資本及び自己資本比率の減少する一方、ROAは実質的改善がなされる.
1.4 不動産の証券化
この意味とはオリジネーター(原資産保有者)が投資ビーグル(Special Purpose Company(Trust)等)に特定の不動産を移し、この資産から生まれる利益を売らず毛として有価証券を発行して、資金を調達することである. オリジネーターにとっては
- 不動産売却可能性拡大
- 保有リスクの移転
- ROA・ROEの改善
- 資金調達コストの削減
- 手元資金の増加
の効果がある.したがって汎用性・規模が大きいほど証券化・SLBが可能である.この結果、自社施設資産をSPCに移行する一方その賃貸借の形態が発生するためAM(資産運用代行)・PM(ビル運営委託)とFMの業務は密接な関係を持つ.
2 プロジェクトの施設投資評価
2.1主な施設評価手法と考え方
世界で主流の現金割引法は、将来利益の価値から利子等の価値を割引き現在価値(Present Value)で評価するもので
- 正味現在価値法(NPV; Net Present Value)
- 内部利益率法(IRR:Internal Rate of Return)
がある。また、今まで日本企業で採用されていた方法として
- 回収期間法(PBP:Pay Back Period)
- 投下資本利益率法(ROI:Return On Investment)
の4つがある。
2.2 投資評価の基礎(現在価値と割引率)
- 「現在価値=N年度のキャッシュ(価値)/(1+割引率)n(*n乗)」
- 「割引率=資本コスト率(WACC:Weighted-average Cost of Capital)+余裕・リスク率」である。また資本コスト率(WACC)とは株主資本コスト率(目標ROE)と負債コスト率の加重平均を言う。したがって
- 「WACC=(re×E + rd(1-t)×D)/(E+D) 」
- 資本コスト率:WACC
- E:株主資本
- re:株主資本の期待利益率(目標ROE)
- D:負債金額
- rd:負債利率
- t:法人税率(日本は0.42)」
となる。割引率には市場・経済・法的・環境・情報化のリスク要素が伴うため各企業の財務Know-Howであり、決定するのは財務担当役員である。
2.3 4つの施設投資評価手法
正味現在価値法(NPV; Net Present Value)
- NPV={R1/(1+i)+R2/(1+i)²+R3/(1+i)³+・・・・+Rn/(1+i)n} - I
- R:キャッシュフロー
- n:期間
- i:割引率
- I:投資額
- 良い投資:NPV≧0
- 投資不可:NPV <0
内部利益率法(IRR:Internal Rate of Return)
- NPV={R1/(1+i)+R2/(1+i)²+R3/(1+i)³+・・・・+Rn/(1+i)n} - I = 0
- IRR=上式(NPV=0)の割引率i (NPV=0になる割引率i がIRR)
- 投資可:IRR≧目標利益率。
- 投資不可:IRR<目標利益率。
回収期間法(PBP:Pay Back Period)
- 割算方式:回収期間=投資額/年平均予想利益
- 引算方式:回収期間=投資額/予想利益<0
- 長所:調達資金の回収性安全性の判断基準に有効
- 欠点:時間価値・回収後の考慮無い。
投下資本利益率法(ROI:Return On Investment)
- ROI={(予想利益-投資額)の年平均}/投資額
- 長所:利益性の判断基準として使用
- 欠点:貨幣の時間価値を考慮していない
2.3 施設投資評価のケース設定とプログラム・ポイント
上記の投資評価指標を組み合わせて総合的に経営判断すること。施設投資評価は経営Know-Howの1つであり、投資リスクの所在と限界を判断することが重要である。FMの役割は
- 重要なことをわかりやすく説明
- 財務要素だけでなく費財務要素も交えて総合的な提案を行う
- 比較ケースを影響力のある順番に行う
ことが重要である。MN施設投資評価プログラムはNPV/IRR/PBP/ROIを同時に出力するプログラムであり施設投資評価にはきわめて有効である。