講義日:2003/11/19 講師名:中津 元次
1.1 FMとは
FMとは; ファシリティーとは組織活動のために使用する施設・環境である。FMの目的は、
- 顧客満足度の向上
- 施設利用者の創造性・生産性の向上
- 経営効率向上
であり、FMの機能は、目的のためにファシリティーを管理することであり、管理目標は
- 財務Cost
- 品質Quality
- 供給Demand
の3つの視点からである。機能遂行のため
- 戦略・計画→プロジェクト管理→運営維持→評価
のルーティーンが実行される。
1.2 グローバル競争と日本
グローバル競争と日本; 製造業は「浮気な蝶」魅力ある花を追い求める。その花は非製造業(金融・不動産・建設)である。2003年IMD調査では日本は世界23位。特に非製造業が弱い。その理由は世界の中で日本の非製造業だけが供給者優先・土地本位制であることによる。グローバル化とは価値観・価格・ルールの同一化であり、
- 価値観:土地本位主義→株式主義
- 価格:土地・賃貸借料の下落
- ルール:国際会計基準(連結決算・減損会計)への移行・敷金保証金の見直し
を意味する。
1.3 2003年問題
東京23区で2005年までのオフィス供給面積は1000万㎡。一方人口予測からオフィスワーカーも残減である。現在の空室率6%オフィス人口変化なしで一人あたりの面積は1割増の25㎡とする必要あり。今後の人口減少、オフィス賃料(IMD調査)・地価(世界標準は土地時価総額がGNPと同じ)とも世界標準の3倍。東京はペンシルビルが多く規模実態・価格不明であり、先行きは暗い。
1.4 日本の人口構成
2004年1億2千700万人をピークに100年後日本の人口は半減する(イギリス・フランスと同規模)。世界の例のない経験となろう。前述のオフィス人口もこの影響を受ける。住宅の影響も大きい。日本の一人あたりの住宅面積は30㎡欧米の1/2から3/4、戸建住居所得費/年収は6.6で欧米の1.5倍から2倍、住宅耐用年数は30年で欧米の1/2から1/4.5、住宅着工戸数は157万戸で人口2倍の米国を上回る。住宅の需要総量の減退は明らかである。
1.5 まとめ‐日本の不動産の長期展望と保有リスク
グローバル化と人口の縮小により施設需要の減退・不動産価格の下落は明らかである。国際会計基準の連結決算・減損会計導入により、施設資産保有のリスク管理がもとめられ、施設資産の効率的運用が求められる。
2.FMによるコストマネージメント
2.1 ROA.ROI.ROEと売上高・利益の関係
ROA.ROI.ROEの関係は下図のようになる。
ROA(Return on Asset)
総資産利益率ROI(Return On Investment)
投下資本利益率ROE(Return On Equity)
株主資本利益率ROA.ROI.ROEの関係図
また、売上高・利益の関係は下図のようになる。
1.製造原価・仕入原価
2.人件費・流通費・広告宣伝費・ファシリティーコスト
3.受取利息・受取配当金・支払利息・為替差損
4.固定資産・投資売却損益
5.法人税・法人住民税売上高・利益の関係は下図
これから、「ROE=資産/資本×ROA」 となりROEはROAと密接な関係を持つ。
「ROA=利益/売上×売上/資産」 ROAアップには利益のアップ資産のダウンが必要である。
2.2 効率経営とFM
? 利益は「利益/売上=1-経費(ファシリティコスト)/売上」で利益アップのためにはファシリティコスト(FC)低減が必須である。(平均的FC/売上=4%、FC10%削減すると、FC/売上=0.4%で利益/売上=0.4%アップ。2003全産業利益/売上=3.8%であるから、利益/売上=0.4%アップを売上のみにて達成するには4.0/3.8=10.5%の売上アップが必要となり、FC削減は有効である。
資産のダウンには施設資産の効率化が求められることを意味する。
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3.ファシリティコスト(FC)低減戦略
MNコストチャート;FCの78%は賃借料・減価償却費・水道光熱費。下のMNコストチャートを利用する。
- 「①FC/売上高=②(入居人数/売上高)×③(FC/施設面積)×④(施設面積/入居人数)」
分析評価・手順;
- ①②の指標は経営的施策の対応が必要。
- ②はFCコスト対策。建物別に検討、立地・保有形態・分散施設統合・アウトソーシングなどFC削減の可能性を探る。
- ④はスペース対策。階別で検討。空机率、会議スペース、通路等も評価しスペースの適正化を目指す