1 評価の視点と評価の仕組み
建築物には評価者により
- 利用・使用
- 資産
- 空間的
- 性能的
- 歴史的
- 文化的
- 芸術的
- 個人的愛着
と様々な価値概念がある.「評価者」は特定の「目的」のため
をよどころに、特定の「対象」を評価する.評価結果は
にフィードバックされる.
2 建築物評価の目的
建築物評価には多様な目的がある.建築物評価には多様な目的は
- 設計の各段階
- コンペ
- 売買
- 賃貸
- 課税
- 融資
- 保険加入
- 資金回収
- 公共事業の補償
- 受注販売
- 企業戦略
が上げられる.特に中古住宅販売市場の評価では、新築住宅数が日本120万戸・米国160万戸であるが中古住宅の流通量は日本がアメリカの1/15である.これは住宅建物評価が日本では10年でただ、米国ではリニューアルや手を加えることで2倍となることもある.日本でも地球環境の点から中古住宅流通量を増やしたいが、これには評価の視点が重要である.このように評価の目的・主体・手法・基準により対象が同一でも評価は大きく異なる.
3 資産としての建築物評価方法
資産としての建築物評価方法は以下の2つの評価方法に分かれる.
- 不動産鑑定評価基準
- 上以外の方法
-
不動産鑑定評価基準の3方式
- 下表のように今後は土地建物を1体化し、積算価格・比準価格の上にさらに収益還元法による収益価格による評価が中心となる.以下は建築の場合の算定法・特徴である.
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計算方法 |
今まで |
今・今後 |
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価格名称 |
① |
原価法(土木造成費・建築積算の手法) |
建物 |
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⇒ |
積算価格 |
② |
取引事例比較法 |
土地 |
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⇒ |
比準価格 |
③ |
収益還元法 |
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建物・土地 |
⇒ |
収益価格 |
-
「原価法」による「積算価格」
- 再調達原価
- 直説法
- 直説法は積算をやり直し不動産登録税等の付帯費用を加える.会計事務所の場合簿価を時価評価する.実務上はほとんどやられない.
- 間接法
- 間接法は同一需給圏内類似地域の類似建物から間接的に求める方法.より実務的・一般的である.
- 減価
- 完成後様々な外部要因により減じる価値.減価の要因には以下の二つがある。
- 物理的要因
- 物理的要因は耐用年数に基づく方法をとり、建築は定額法・設備は定率法でも良い.定額法の場合財務省令で償却期間がRC住宅47年設備15年と定められる為それぞれ原価の2.2%、6.6%が毎年の減価額となる.
- 機能・経済的要因
- 機能・経済的要因については観察減価法が用いられるが恣意的な方法である.
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「取引事例比較法」による「比準価格」
- 多数の取引事例を収集し適切な事例を選択の上、事情補正・時点修正・地域要因個別的要因の比較を行い価格を求める.土地建物の複合的な価格の場合は同類型の土地価格を控除し建築の価格を求める配分法もある.実務上は使われていない.
-
「収益還元法」による「収益価格」
「収益価格=純収益(償却前営業利益NOI=Net Operating income)÷還元利回り」 (式A)
- で求める.純収益の原価の総和(現在価値)を求める.つまりi純収益を還元利回りで還元する方法である. NOIは持ち主・経営により変わる.NOIはプロパティーマネージメント(建物の運営管理)により変わるし、また土地と建物を分けて考えることも意味がなくなる.
-
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還元利回り(期待利回り・キャップレート)
- 不動産の収益性を表す.利子率と密接な関係があり「還元利回り=無リスク資産の利回り(10年国債の利回り)+物件のリスクプレミアム」でもある.
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純収益を還元する方法
- 上の式Aは最も簡単な式で土地建物を複合した場合も用いられる.また建物等償却資産の場合、総合還元利回り・収益期間を基礎とした複利年金原価率を乗じる方法(インウッド式)がある.この場合収益期間満了時の残存価格・処分整理費を加減する.
- P=n×複利年金原価率+(Pla+Pba(もしくは-E)/(1+r)ª
- 複利年金原価率=n/(1+r)+n/(1+r)²+・・・+n/(1+r)ª=n{((1+r)ª-1)/ r(1+r)ª}
- P:収益価格
- n:NOI
- r: 総合還元利回り
- Pla:a年後の土地価格
- Pba: a年後の建物等価格
- a:収益満了期間
- E:建物等撤去費
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上記以外の評価方法
- 以下の3つの方法がある。
- 固定資産家屋評価基準に基づく家屋評価(評点式評価法=行政で実施している)
- 公共事業における家屋の補償評価
- 火災保険における家屋評価
-
建築物評価のためのデータ
- 建築価格把握に有効な主なデータは次のような指標があげられる。
- 建築統計調査着工建築物構造別都道府県別表(建設省計画局調査統計課建築統計月報・年報)
- 標準建築費指数/用途別10都市(建設工業経営研究会)」等が上げられる.
4 建築物評価の今後の課題
- 市場動向の変化に対応した収益還元法を用いた評価
- 原価方式に代表される生産者の視点からCS・生活者の視点の評価
- 収益価格のように土地建物の一体評価
- インターネットなど新しい概念に対応した評価
の視点が今後求められる.